Thursday, December 25, 2008

青い鳥


2008年もクリスマスを迎えてしまったようです。

Merry Christmas.

大切な人達が多く去って行った今年は、淋しさも手伝って余計に冷え込んでいるけれど、みんなそれぞれの場所で幸せな時間を過ごしている事を願います。

ここずっと冷え込んでいるRockridge。
東京とベイエリアの気温がほぼ変わらないという噂を聞いて、今年は特に寒い冬なのだなと実感。暖房つけても、冷え性気味の机の下の足は冷えきったままです。
あたしもこたつが欲しいですな。

新しい家に引っ越してからもう2ヶ月程経ちます。
うちにはCertified Wildlife Habitatに指定されている広い庭があります。
リスや小鳥が住んでいて、彼らの生活っぷりを眺めるのが日課になっているこの頃。
見た事もない種類の鳥を見かける事もしばしばです。
その中でも、運命を感じる鳥がいます。
幸せの、青い鳥。

私のE-mail AddressがFreedomBlueBirdsなのは近しい友達なら皆ご存知だと思いますが、まさにその名の通りの青い鳥。
いつも突如出没するので、写真に収めるのはなかなか至難の技。
こないだついに成功したので、ここに載せようかと思った次第です。
また新たな年が巡って来て、年齢を重ねるごとに、いつまでも鳥籠の中に閉じ込められない自由な鳥でいたいと願うことも難しくなって来たのを実感しながら、それでも相変わらず私は、空の蒼さと鳥の自由さに憧れたまま生きて行くんだろうなと思います。

地に足つけて
空を仰いで
白い息吐いて
先を見つめて。

海外生活も5年。
緑の草木や花々、自然の生き物、優しい木漏れ日に囲まれながら、碧生のRockridge生活は続いてゆくようです。
みんな、あったかい冬を。

Friday, December 19, 2008


2008年10月3日に行ったSIR第3弾のアートショー「頁」。
遅ればせながら、ここで振り返ってみたい。

春夏秋冬の秋のシリーズということで、テーマは「読書の秋」。
個々のアーティストが、それぞれ思い入れのある本を一冊選び、その世界観をそれぞれのメディアで表現するというもの。
もちろん選ぶ作家は日本人作家。海外の人々にも、日本の知られざる文学の世界に触れてもらういい機会になれたらとの想いもあり、こういった形に辿り着いた。
私が選んだのは、夏目漱石の「こころ」。
父親が大学時代に、卒論で研究したのが夏目漱石であり、幼い頃から夏目漱石にはかなりの啓発を受けていたために、まず一番最初に思い浮かんだのはこれしかなかった。

「こころ」を初めて読んだのは高校のとき。通学途中の地下鉄の中で、黙々と読んでいたら入り込んでしまい、気がつくと幌平橋駅を超えて大通り駅まで来てしまっていた。
あわてて反対側の路線に乗り変え、駅から猛ダッシュしたのだが案の定遅刻。
その日担任は休みで、副担任の英語の先生が教室で朝の連絡を済ませたところに駆け込んだ。
この先生はどうにも変わり者で、時々変な事を語り説き出すことで知られていた。
例えば、道を歩いていて通りを行く人々の背中を見ていると銃で全員撃ち殺してやりたくなる衝動に時々駆られるなどという非道徳的なことを言う教師であった。

その彼に、「こころ」に没頭しすぎた為に地下鉄を降り過ごした旨を告げると、先生は遅刻のことを夏目漱石の名により了承してくれた。「漱石ちゃん」の「こころ」はいい本だからまあ遅刻もオッケーという先生。
ふむ。。
そんな思い出が脳裏を掠めてゆく。

まぁそんなことはどうでもいいのだが、兎に角私は漱石の『こころ』を改めて読み、そこからインスピレーションを得て三作品を創り上げた。

1. 自我 Ego

2. 懊悩 Anguish

3. 寂寞 Desolate


これら3作品はすべてSlate石の板の上に墨で作品からの引用文を書き、雅印を押す代わりに彫り込んだ。
(3作品ともお買い上げいただきました。ありがとうございます!)

メンバー全員、それぞれの作品から個性が滲み出ており、今回の展示はかなり味わい深いものがあった。みんながどんな本を読んでいるのかということを知るだけでも、かなり視点が変わる。そして、その影響が作品に見え隠れしているのが、芸術の中のかくれんぼのようで眼に楽しい。

ライブペイントは、今回は一つ詩を選び、その詩の世界を表現しようというアイディアで話を進めていた。Noaと二人で、誰の詩がいいのかと色々考えた末、谷川俊太郎の詩がしっくりくるという結果に落ち着いた。潤子さんによる素敵なフライヤーデザインのモチーフになっている「鳥」からアイディアを引き延ばし、谷川氏の「鳥」という詩を、ライブペイントの軸にさせて頂いた。カラフルに渦を巻いてゆく鳥の体のうえに、この詩を一行一行書き連ねる。この「鳥」という詩の世界を、ライブで、Visualizeしていく。
面白い試みだった。
Noaの線使い、色使いと、私の文字が定義してゆく作品の意味が、うまく重なり面白いものになったと思う。もちろん反省点も多くあるが。ね。




「鳥」の一部を拝借。


鳥は空を名づけない
鳥はただ空を飛ぶだけだ
鳥は虫を名づけない
鳥は虫を食べるだけだ
鳥は愛を名づけない
鳥はただふたりで生きてゆくだけだ
.
.
.
鳥は生を名づけない
鳥はただ動いているだけだ
鳥は死を名づけない
鳥はただ動かなくなるだけだ

空はただいつまでもひろがっているだけだ


ぜひこの詩を探して読んでみてください。
忘れていた事に気付かされる、読み深い詩です。

次回につながる、いいショーが出来た。
SIR(Surreality in Reality)という流動体は、まだまだ進化の途中。
今回このショーの開催にあたり協力してくれた皆さんありがとう。
みんな愛してるよ!!



全てのショーの模様は、SIR Flickrに於いて観る事が出来ます。
ぜひごゆっくり閲覧どうぞ。